啓発広報ラボ

一般財団法人 家電製品協会様

反応が見えない啓発から、若い世代に届く広報へ|家電製品協会の取り組み

広報部 / 公開日:2026/07/06

家電リサイクル法という「地味だけれど、正しく知ってほしいテーマ」を、若い世代にどう届けるか。
一般財団法人 家電製品協会は、新聞・雑誌を中心とした従来の広報から、パラパラ漫画とSNSを使った啓発へと手法を切り替えました。
反応の見えない状態から、月次で数値を追える広報へ。同協会 広報部の三善様に、切り替えの経緯と現在地について伺いました。

新聞・雑誌では、若い世代に届かなかった

家電リサイクル法は、使い終わった家電を適切にリサイクルするための仕組みを定めた法律で、消費者一人ひとりの理解と行動が欠かせません。ただし内容の性質上、日常のなかで自然に関心が湧くテーマではありません。

「家電リサイクル法はとても大切な仕組みです。ただ、正直なところ内容は地味で、特に若い世代にはなかなか届きにくいところがあります」と、三善様は当時の課題を振り返ります。

さらに大きな悩みは、手応えが得づらいことでした。新聞・雑誌・広報誌といった従来の手段では、そもそも届いたかどうかを測ることが難しく、続けても改善の手がかりが見えにくい状態だったといいます。

そこで議論の起点になったのが「SNSを活用して、もっと柔らかく、親しみやすい表現で伝えられないか」という問いでした。若年層に日常的に接触できる経路と、義務的なトーンにならない表現。この2つを同時に満たす手段を探すところから、プロジェクトは始まりました。

複数社を比較して、パラパラ漫画とSNSを選んだ理由

方針が定まってからは、複数の制作会社に声をかけて提案を比較したといいます。
この過程は、業界団体・公益法人の広報担当者が同じ課題に直面したときにたどるプロセスと重なります。

「他社の提案は、自分たちの得意分野を押し出したものが多かった印象です」と三善様は話します。
制作手法や表現のバリエーションは示されるものの、「若い世代にどう届けるか」という本質的な課題に応える提案は限られていたといいます。

最終的に選ばれたのは、制作パートナーであるアトムストーリーが提案した、
パラパラ漫画とSNS運用を組み合わせる形でした。
決め手は、依頼内容を超えたプラスアルファの提案があったこと、そして「自分たちが持っていない視点」を加えてくれたことだったといいます。

「もっとこうしたほうが伝わりますよ、という提案をいただけたことは大きかったです」(三善様)

反応が「見える」広報になった

切り替え後、最も大きな変化は「反応が見える」ようになったことでした。

制作したパラパラ漫画はSNSを通じて配信し、月次で数値レポートを受け取る運用に切り替えました。
以前のように「出したあと、届いたかどうかがわからない」状態ではなく、
毎月の推移を追いながら次の打ち手を検討できる体制になったといいます。

2024年秋には、若年層向けのアンケート調査も実施しました。
「どの層に、どの程度、認知が広がっているか」が数値で可視化されたことで、
「どこに重点的に啓発すべきか」という方針も具体的に定まりました。

「以前は新聞や雑誌など効果測定の難しい手段が中心でしたが、
今ではSNSを通じて、成果を見える化できています」(三善様)

反応が見えると、担当者の実感が変わります。「やっているのに伝わっているかわからない」から
「今月はこの層に届いた」に変わることで、上長や理事会への説明もしやすくなり、次の予算判断の材料も揃うようになります。

コンテンツがあると、啓発は「具体的」になる

もう一つの変化は、啓発活動そのものが「具体的な形」を持つようになったことでした。

制作したパラパラ漫画やオリジナルキャラクターは、
渋谷のデジタルサイネージや科学技術館など、SNS以外の場所への展開も始まっています。

「これまでは『啓発しなきゃ』と言いながら、具体的な手段が乏しかったんです」と三善様は語ります。
「でも今は、キャラクターやパラパラ漫画という『手触りのある伝え方』があります。
私たち自身の発信力も、大きく変わってきたと感じています」

啓発すべきテーマが決まっていても、それを表現する手段の引き出しがなければ、活動は抽象的になりがちです。
手に取れるコンテンツが揃うことで、初めて「どこで、どう見せるか」の議論に進めるようになった、というのが同協会の実感です。

啓発は、長期の伴走が前提になる

家電リサイクルの理解促進は、一度の広報施策で完結する類のものではありません。
世代が入れ替わり続けるなかで、若い層への周知は継続的に取り組む必要があります。

「今後も課題を一緒に解決していく『伴走型のパートナー』として並走していただけたらと考えています」(三善様)

同協会の取り組みは、業界団体や公益法人が直面する「地味だが重要なテーマを、若い世代に届ける」という課題に対する、一つの実践例と言えます。
反応の見える手段に切り替えること、そして単発ではなく継続できる体制を組むこと。
この2つが、届く啓発広報を支える土台になっています。

(取材:2025年4月/最終更新:2026年6月)