啓発活動で無関心層にどう向き合う?「関心×行動」の4つの状態から考える

公開日:2026/10/23

導入|関心を高めることだけが、啓発活動の正解なのか?

リサイクル、安全対策、健康、制度の普及など、企業や業界団体ではさまざまな啓発活動が行われています。

こうした活動では、「まず知ってもらう」「関心を持ってもらう」ことが重視されます。しかし、関心を持ってもらうことが、必ずしも行動につながるとは限りません。

例えば、環境問題に関心があっても、ごみの分別を徹底できない人がいます。一方で、環境問題に特別な関心がなくても、日常の習慣として正しく分別している人もいます。

関心があるのに行動しない人と、関心がなくても行動している人。この違いは、啓発活動を考えるうえで重要な手がかりになります。

啓発活動がマンネリ化している。情報が伝わっている実感がない。何を成果とすべきか分からない。

そんなときは、新しい施策を考える前に、生活者の「関心」と「行動」を分けて捉え直すことが、見直しの第一歩になるかもしれません。

本記事では、「関心」と「行動」の2つの視点から生活者を4つの状態に整理し、無関心の背景や、関心がなくても行動できる条件について考えます。

1. 関心と行動は必ずしも一致しない

啓発活動では、情報を知ってもらい、関心や理解を深め、行動につなげることが期待されます。

しかし、生活者が必ずしも同じ順序で行動するわけではありません。

例えば、ペットボトルの分別を習慣として行っている人が、環境問題について日常的に考えているとは限りません。

反対に、リチウムイオン電池の適切な廃棄に関心があっても、回収場所が分からなければ、実際の行動に移せない場合があります。

つまり、関心の高さと行動の有無は、分けて考える必要があります。

この違いを整理するために、「関心×行動」の4象限で生活者の状態を捉えます。

2. 「関心×行動」の4象限で生活者を捉える

ここでいう「関心」とは、対象となる問題について、普段から意識したり、気にかけたりしている程度を指します。

「行動」とは、実際に行動する機会があった際に、啓発活動が促したい行為を実践しているかどうかを指します。

行動している

行動していない

関心がある

① 関心があり、行動している

② 関心はあるが、行動していない

関心がない

③ 関心はないが、行動している

④ 関心も行動もない

啓発活動における生活者の関心と行動を4つの状態に整理した図

① 関心があり、行動している

対象となる問題を普段から気にかけ、実際の行動にもつながっている状態です。

例えば、環境問題に関心があり、日常的に分別やリサイクルを実践している人が該当します。

この層では、行動を継続できる条件や、必要な情報を更新して届けることが課題になり得ます。

② 関心はあるが、行動していない

普段から関心を持っているものの、行動に移せていない状態です。

例えば、電池を適切に廃棄したいと考えていても、回収方法が分からなかったり、回収場所が遠かったりする場合です。

この層では、関心をさらに高めるだけでなく、行動を妨げている条件を確認する必要があります。

③ 関心はないが、行動している

テーマそのものに強い関心がなくても、習慣や社会的なルールによって行動している状態です。

例えば、環境問題を普段意識していなくても、地域のごみ出しルールに従って分別している人が該当します。

この層では、必ずしも関心を高めることが最優先とは限りません。行動しやすい環境や習慣を維持することが重要になる場合があります。

④ 関心も行動もない

テーマへの関心が低く、行動にもつながっていない状態です。

ただし、すべての人に関心を持ってもらう必要があるとは限りません。

例えば、対象となる製品を使用しておらず、行動する機会がない人まで、同じ啓発対象として考えるのは適切ではありません。

まずは、その人にとって行動が必要なのか、なぜ関心を持っていないのかを確認することが重要です。

なお、行動する機会がない人は、単純に「行動していない人」に分類せず、別に扱う必要があります。

4象限は、施策を見直すための「問いを立てる道具」

この4象限は、生活者を固定的に分類したり、行動の原因を断定したりするものではありません。

対象者の状態を整理し、次に何を確認すべきかを考えるための枠組みです。

生活者の状態

施策を考える際の問い

関心あり・行動あり

行動を継続できている条件は何か?

関心あり・行動なし

何が実行を妨げているのか?

関心なし・行動あり

関心がなくても行動できている理由は何か?

関心なし・行動なし

行動が必要な対象者か? 何が関心や行動を妨げているのか?

例えば、啓発情報が十分に伝わっていないと感じていても、実際には「関心がないこと」が課題なのか、「関心はあるが行動できないこと」が課題なのかによって、次に確認すべきことは異なります。

新しい動画や広告を制作する前に、こうした問いから対象者の状態を捉え直すことが、施策を見直す手がかりになります。

3. なぜ人は無関心になるのか? 4つの背景

無関心と一言でいっても、その背景は同じではありません。

無関心を生む背景

生活者の状態

認識不足

問題や制度そのものを知らない

自分との関連性が低い

知っていても、自分には関係ないと感じている

重要性を感じない

自分に関係することでも、優先するほど重要だと思っていない

関心を向ける余裕がない

必要性は感じても、他のことが優先されている

無関心を生む認識不足、関連性、重要性、余裕の4つの背景

例えば、リチウムイオン電池の廃棄方法を知らない人と、知っていても自分には関係ないと思っている人では、必要な情報が異なります。

前者には問題やルールの存在を知らせることが必要かもしれません。一方、後者には、どのような生活場面で自分に関係するのかを示す方が適切かもしれません。

また、重要性を感じていても、日々の生活の中で考える余裕がない場合もあります。

こうした違いを捉えず、すべての無関心層に同じ情報を届けても、期待した反応が得られるとは限りません。

なお、これらの背景は互いに重なる場合があります。無関心層を必ず4種類に分類できるという意味ではありません。

そして、無関心の背景を理解することは重要ですが、関心の低さだけで、行動しない理由を説明することはできません。

そこで、関心の背景とは別に、行動を支える条件についても考えてみます。

4. 関心がなくても行動できる4つの条件

関心が低くても行動できる人がいるのはなぜでしょうか。

その背景には、次のような条件が考えられます。

行動を支える条件

具体例

習慣化

ごみの分別を日常の習慣として行っている

社会的規範

周囲も守っているルールに従う

行動のしやすさ

回収ボックスが身近にあり、迷わず利用できる

外的な動機

ポイント還元やルールなどが行動のきっかけになる

これらは、無関心な人だけに働く条件ではありません。関心がある人の行動にも影響します。

重要なのは、人が行動するために、必ずしも強い関心や共感が必要とは限らないという点です。

例えば、分別の重要性を繰り返し伝えるよりも、分別方法を分かりやすく表示したり、回収場所を利用しやすくしたりする方が、行動につながる場合も考えられます。

もちろん、情報発信だけで解決できない課題もあります。回収場所が不足しているのであれば、情報の伝え方だけでなく、回収環境そのものを見直す必要があるかもしれません。

啓発広報では、関心を高めるための情報発信と、実際に行動しやすくするための働きかけを、分けて考えることが重要です。

まとめ|関心を高めることだけが、啓発活動の正解ではない

啓発活動では、生活者の関心を高めることが重要な場合があります。しかし、関心があっても行動しない人がいる一方、関心がなくても習慣や環境によって行動している人もいます。

そのため、生活者を一律に「関心がある人・ない人」と捉えるのではなく、関心と行動を分けて考える必要があります。

そして、無関心の背景や行動を支える条件を理解することで、何を伝えるべきか、どのような働きかけが必要かを考える手がかりになります。

啓発活動の目的は、すべての人に関心を持ってもらうことではなく、対象者に必要な理解や行動につなげることです。

生活者の状態を把握したうえで、啓発活動の成果をどう定義し、何を測定し、次の施策にどうつなげるかについては、「啓発活動の効果測定とは?認知度調査から成果報告・施策改善までの進め方」で詳しく解説しています。

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